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心理学・メンタル

2026年5月4日

産業カウンセラー養成講座を修了して

執筆: ただの会社員

はじめに

2025年の春から秋にかけて、産業カウンセラー養成講座を受講しました。受講費用は約45万円。決して安い投資ではありませんでしたが、この金額以上の価値を得ることができました。

本記事では、なぜこの講座を受けることになったのか、そして何を学び、どう変わったのかについて、率直に綴りたいと思います。


受講を決めたきっかけ

当時、新人研修の運営とメイン講師を務めていた私は、毎年複数の新人からメンタル面での相談を受けていました。仕事への不安、人間関係の悩み、時には家庭の問題や心身の不調まで、様々なメンタル課題を抱えた若者たちと向き合う中で、受容的に耳を傾け、感情を受け入れようとする姿勢を自然と身につけていました。

ただ、その時点では特に資格や専門知識があったわけではなく、相手の話に耳を傾けることが重要だという直感的な理解に留まっていました。

受講を決めたのは、こうした実践経験を理論的に学び、さらに適切なカウンセリングスキルを習得したいという明確な目的があったからです。新人たちのメンタルサポートをより効果的に行うために、プロフェッショナルな知識と手法を身につけたいと考えました。

産業カウンセラー養成講座での約半年間、その目標は十分に達成されました。講座を通じて、他者の話に耳を傾けるメカニズムや心理学的理論を学びながら、同時に自分自身の内面と向き合うという、予想外に深い学習経験となったのです。


ロールプレイングと小論文を通じた「再認識」

講座の中で最も心に響いたのは、ロールプレイング実習小論文の発表です。

ロールプレイングでは、受講生同士がカウンセラー役とクライアント役に分かれ、実際の対人相談場面を演習します。自分がクライアント役を演じる時、無意識のうちに自分の人生経験や感情が表現されていました。他の受講生や講師がその場面を通じて、私の心理状態を反映してくれるのです。

小論文の発表では、自分の人生経験や学習を通じた気づきを、言語化して表現する必要がありました。その作業の中で、自分の経験や感情を言語化する機会が何度もありました。その過程で、私は次第に気づき始めたのです。

「やはり、私の幼少期は虐待を受けていたのだ。」

それまでは、漠然とした「生きづらさ」として感じていたものが、虐待という具体的な言葉で説明されるようになりました。この再認識は、自分の人生を振り返る契機となったのです。

この再認識は、決して苦しいものではありませんでした。むしろ、生きづらさの正体が言語化され、受け入れていただいたことで、心が浄化される感覚を覚えました。それは、自分が長年抱えていた不安や疑問に対して、明確な「答え」を得たような安堵感でもありました。

受講生の仲間たちや、経験豊かな講師たちが、ありのままの私を受け入れてくれた。その環境こそが、最良の学習の場だったのです。安全で承認的な関係性の中では、人間は本来の自分を受け入れることができるのだということを、身をもって体験しました。


前職での経験が「正しかった」という確信

実は、この講座を受ける数年前から、私は新人研修におけるメンタル面のサポート業務に携わっていました。

毎年、新入社員として入社した十数人から数十人の若者たちと関わる中で、仕事への適応や人間関係の悩み、時には家庭の問題や心身の不調まで、様々なメンタル面での相談を受けていました。当時は、特に資格や専門知識があったわけではありません。ただ、相手の話に耳を傾け、その人の背景や感情を尊重しようとする姿勢を大切にしていました。

相手が話す内容そのものではなく、その背景にある感情や葛藤に目を向けることで、相手が自分の気持ちを整理し、前に進む手助けができるのだと感じていました。

講座を修了した今、その姿勢こそが「産業カウンセラーが根ざす態度そのもの」であったことに気づきました。

カウンセリングの理論を学ぶ中で、「共感的理解」「無条件の肯定的関心」「自己一致」といった基本的な態度が説かれます。それらは、私が新人研修の現場で自然と実践していたものだったのです。

自分が行ってきたことが、決して間違っていなかった。むしろ、その方向性は正しかったのだという充実感を得ることができました。資格取得という目的も重要ですが、この「自分のこれまでの行動と選択への確信」を得られたことが、何よりの収穫だったのです。


約45万円の価値は

受講費用約45万円。決して小さな金額ではありません。

しかし、この投資を通じて得たものは、金銭的な価値では測れません。

  • 自分の過去を理解し、言語化する力

    • これまで漠然としていた「生きづらさ」を、虐待経験という具体的な文脈で理解できるようになりました。
  • 生きづらさの正体を知ることで得られた心の軽さ

    • 正体不明の不安が、具体的な原因として認識されることで、心理的な負担が大きく軽減されました。
  • 自分の行動や考え方に対する確信と自信

    • 過去の自分の選択や姿勢が「正しかった」と確認できることで、現在と将来への向き合い方が変わりました。
  • 対人関係スキルと心理的知見の習得

    • カウンセリングの理論と実践を通じて、自分や他者をより深く理解する方法を学びました。
  • 人生の意味と方向性の確認

    • 自分が本当に大切にしたいことが何か、人生において何を優先すべきか、その問いに対する答えが見えてきました。

これらすべてが、私の人生観を大きく変えました。金額以上の価値。その一言に尽きます。

45万円という金額は、私にとって「自分という存在を再度知り直すための投資」であり、その結果として得られた心の安定と確信は、いかなる金銭的価値で換算しても足りないほどの尊いものだったのです。


試験は不合格でも、修了資格は永遠

2026年1月、産業カウンセラーの本試験に挑戦しました。

試験に向けての準備期間は、講座修了後もこれまでの学習内容を整理し、深める時間となりました。同時に、仕事と勉強の両立という新たな挑戦でもありました。

結果は、残念ながら不合格でした。

試験問題を見直すと、自分が十分に習得していない領域や、実践的な応用問題への対応が不足していたことに気づきました。一時は悔しい思いもありました。

ただ、この結果が私の心を大きく傷つけることはありませんでした。なぜなら、既に「産業カウンセラー養成講座修了」という実績が、私の手元に残っていたからです。

試験の合格・不合格は、人生における成功と失敗の一つの指標に過ぎません。しかし、講座を通じて自分自身と向き合い、学んだことや成長した部分は、誰にも奪われることのない個人資産となっているのです。

この修了資格は、生涯消えることのない、私の財産です。それは単なる「修了証」という紙切れではなく、自分の人生経験の一部であり、心身の成長の証だと考えています。


今後へのコミットメント

今は現職で働きながら、この講座で学んだ知識と姿勢を活かしたいと考えています。

職場での新人教育やメンタルサポートの場面では、これまで以上に自信を持って、受容的で共感的な関わりができるようになりました。また、同僚との関係性や、上司へのコミュニケーション方法についても、より意識的に、丁寧に接することができるようになったと感じています。

同時に、ボランティア活動など、地域社会に貢献できる場面を探っています。子育てや教育に携わるボランティア、またはメンタルヘルス関連の地域支援活動など、自分の学んだ知識と経験を活かせる場所があるかもしれません。

産業カウンセラー養成講座で学んだ「受容的なマインドセット」を、より多くの人々のために活かす。それが、私の次の目標です。

試験に不合格だったという事実も、実は大切な学びです。完璧さよりも、人との関わりを大事にすること。結果よりも、そのプロセスを大事にすること。そうした「人間的な」価値観を、自分の行動で示していきたいと思っています。


終わりに

約45万円の投資から始まった、この半年間の学びの旅。

それは、自分自身の過去と向き合い、生きづらさの正体を知り、そして自分の行動に確信を持つことへの道のりでした。

「産業カウンセラー養成講座修了」という肩書きよりも、そこで得た「心」と「姿勢」こそが、本当の宝物なのだと思います。

これからも、この学びを大切にしながら、誰かの「生きづらさ」に耳を傾けられる人でありたい。そう心から思っています。


参考書籍

本記事で紹介した産業カウンセラー養成講座で使用される公式テキストです。カウンセリングの理論と実践を学ぶための必読書です。

産業カウンセリング 産業カウンセラー養成講座テキスト1・2

産業カウンセリング 産業カウンセラー養成講座テキスト1・2

著者: 日本産業カウンセラー協会(JAICO)


参考情報

産業カウンセラーの養成講座や試験についての詳しい情報は、以下の公式サイトをご参照ください。

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